遺言書などは、すべての人に必要かというと、必ずしもそうとはいえません。
ただ、例えば次のような方の場合は、自分の希望通りにいかなかったり、のこされた人が困ってしまう可能性が高いです。
しっかりとした意思をもっているうちに、ご自身の情報や財産を整理し、ご家族や関係者と話し合って、遺言書などを作ることをおすすめします。
相続手続がお済みでない方へ
相続登記の義務化により、不動産を引き継いだ方は、その所有権の取得を知った日、または、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなりました。
未登記のままにしておくと、お子さん・お孫さんたちが行わなければならない手続がより複雑になるだけでなく、家族間のトラブルの原因になりかねません。
当事務所では、戸籍謄本の取得や、相続関係説明図、相続財産目録、遺産分割協議書など、相続手続に必要な書類作成をお手伝いいたします。
そして、信頼のある司法書士等と連携しながら、相続登記の手続を進めてまいります。
一人暮らしの方へ
入院や介護施設に入所することが必要になったときに、家族ならできる入退院・入所の手続、預貯金の引き出し、支払いなどを誰に頼むかが問題となります。
兄弟姉妹や甥姪など頼れる親族がいない場合、友人や専門家などにあらかじめ頼んでおくのもひとつの方法です。その場合は、財産管理委任契約や任意後見契約を結んでおく必要があります。
また、亡くなった後の財産の処分や葬儀、納骨、諸手続については、遺言書や死後事務委任契約を作っておくことで、友人や専門家などに頼むことができます。
お子さんのいないご夫婦へ
パートナーとの死別は、人生最大のストレスといわれています。のこされたパートナーが高齢である場合、大きなストレスがかかっているなかで、葬儀、納骨、相続などの諸手続を期限までにおこなうのは、さらなる負担となってしまいます。
パートナーの負担をできるだけ減らしたい場合や、頼れる親族がいない場合は、死後事務委任契約を結んでおくことで、信頼できる第三者に葬儀や諸手続などを任せられます。
また、亡くなったパートナーに兄弟姉妹や甥姪がいる場合は、遺産分割協議をする必要があります。のこされたパートナーに安心して暮らし続けてほしい、相続手続の負担をできるだけ軽くしてあげたいと考えておられる場合は、遺言書を作っておくことをおすすめします。
元夫・元妻との間にお子さんがいる方へ
離婚をされたことがある場合、元夫・元妻との関係はなくなりますが、お子さんとの法的な親子関係はなくなりません。そのため、老後のことや亡くなった後に、お子さんが困る場面にあう恐れがあります。
特に、新たなパートナーとの間にお子さんがいる場合は、そのお子さんと元夫・元妻との間のお子さんは、異父兄弟・異母兄弟(半血兄弟)の関係になります。
そのため、相続の場面などでもめないように、遺言書を作り、お子さんひとりひとりにメッセージをのこしておくことをおすすめします。
所有している財産の大部分が不動産である方へ
所有している財産の大部分を自宅などの不動産で占めている場合、のこされた家族の負担が大きくなったり、もめる可能性が高いです。
なぜなら、相続人が複数いる場合は、土地・建物そのものを分けることができないので、お金に変えて遺産分割をしなければなりません。そうなると、まずは売却手続をしなければいけませんし、これまで自宅に住んでいた方の新たな住まいを探す必要が出てきます。
そのため、のこされた家族が安心して暮らし続けられるように、遺言書を作ることをおすすめします。遺言書では、遺産分割の方法を決めるだけでなく、ご家族ひとりひとりにメッセージをのこしておくことが可能です。
ご家族のなかに認知症・知的障害のある人がいる方へ
相続が発生すると、法定相続人全員で遺産をどのように分けるかを話し合う必要があります。これを遺産分割協議といいます。
しかし、法定相続人のなかに、認知症や知的障害・精神障害のある人、未成年者、行方不明者がいる場合は、すぐに遺産分割協議ができません。まずは、家庭裁判所で成年後見人、特別代理人、不在者財産管理人の選任などの手続が必要です。
しかし、遺言書があれば、遺産分割協議を省略して相続手続を進めることができます。亡くなった後の預貯金の口座凍結をすこしでも早く解除したいなどのご希望がある場合は、遺言書を作っておくことをおすすめします。
また、ご自身や認知症などのあるご家族の暮らしを守るために、専門家などと任意後見契約や死後事務委任契約や、信託契約を結ぶことを検討するとよいでしょう。
ペットと暮らしている方へ
ペットを家族の一員として暮らしておられる方も多いと思います。
ペットのお世話ができる家族・親族がいない方は、入院や施設に入所したり、万一のことがあったときに備えて、信頼できる人や保護団体にペットのことを頼んでおくことが必要です。
その場合は、財産管理委任契約、遺言書、死後事務委任契約を作ったり、信託契約を結ぶ方法も考えられます。
当事務所では「相続問題チェックシート」をお配りしています。そちらを使って、まずはご自身が亡くなった後にどのような問題が起こる可能性があるかをチェックしてみることをおすすめします。